
日々の業務において、報告書、提案資料、技術レポートなど、様々なドキュメント作成に追われているビジネスパーソンや士業の方は多いのではないでしょうか。特に私たち土地家屋調査士のような専門職は、正確な情報と体裁の整った書類作成が常に求められます。
この「資料作成」という時間を要するプロセスを、生成AIであるGeminiが劇的に変えようとしています。
2025年10月27日、GoogleはついにGeminiのPDFエクスポート機能の公式リリースを発表しました。あわせて「LaTeX(ラテフ)」への対応も強化され、Geminiは単なる対話型AIから、高度なドキュメント作成ツールへと大きな一歩を踏み出しました。
しかし実は、この公式発表の少し前、筆者(geminic.net運営者)は「もしかして…」と思い、Geminiに何気なくこう尋ねていました。
「(Gemini Canvasで)PDFにできる?」
この記事では、公式アップデートの詳細と、その先行体験とも言える「Geminiによるスライド形式PDFの生成」の実録、そしてこの新機能が土地家屋調査士の報告書作成業務にどのような影響を与え得るか、専門家の視点から解説します。
Geminiが公式に「PDF生成」「LaTeX対応」を発表
まずは、2025年10月27日に発表された公式アップデートの核心部分を見ていきましょう。
アップデートの主な内容
今回のアップデートで、Geminiは特にドキュメント作成と共有の機能が大幅に強化されました。
- PDF生成(エクスポート): Geminiが生成した回答や、Gemini Canvasで作成したドキュメントを、直接PDFとして生成・プレビュー・ダウンロードできるようになりました。
- CanvasでのLaTeX編集: Gemini Canvas内で、
fxボタンからLaTeXコードを追加・編集できるようになりました。これにより、複雑な数式やレイアウトもドキュメントに直接埋め込めます。 - LaTeXコードのコピー: Geminiの回答に含まれる数式などのLaTeX部分を、レンダリング(表示)された状態ではなく、元のLaTeXコードとしてコピーできるようになりました。
(※PDFエクスポート機能はWeb版・モバイルWeb版で利用可能、iOS/Androidアプリでは現在(2025年10月時点)閲覧のみ対応となっています。)
専門用語解説:「LaTeX(ラテフ)」とは?
「LaTeX」という言葉に馴染みのない方も多いかもしれません。
LaTeX(ラテフ)とは、高品質な文書作成(組版)システムの一つです。特に、数式、論文、技術報告書、書籍など、複雑なレイアウトや専門的な記号を美しく正確に記述することに優れています。
これまで、LaTeXを使うには専門の編集ソフトやコマンドの知識が必要で、エラーの修正も一苦労でした。しかし、今回のアップデートにより、Geminiがこの「専門家のためのツール」を、より多くのビジネスパーソンにとって身近なものにしたと言えます。
私たち土地家屋調査士にとっても、例えば求積表や複雑な計算過程を示す技術報告書などへの応用が期待されます。
【実録】公式発表前夜?「PDF作れる?」と聞いたら…
さて、この公式発表を知る少し前。筆者はGemini Canvasの可能性を探る中で、ふと疑問が湧きました。
「このCanvasの内容を、そのまま資料として書き出せないか?」
きっかけは単純な質問
そこで、Geminiに対し、チャットで単純に「PDFにできる?」と尋ねてみました。正直なところ、当時はまだ公式機能としてリリースされていなかったため、多くは期待していませんでした。
すると、Geminiは少し考えた(ように見えた)後、PDFファイルの生成を開始したのです。

驚きの「スライドPDF」生成能力
さらに驚いたのは、その中身です。単なるテキストの羅列ではなく、私がCanvas上で構成していた見出しや箇条書きを認識し、まるでプレゼンテーションスライドのような形式で複数枚のPDFを生成してくれました。
調子に乗って「この内容で5枚のスライドにして」といった追加指示をしても、Geminiは健気に(そして正確に)指示を反映したPDFを作成し直してくれたのです。
この体験は、Geminiがすでに「ドキュメントの文脈」を深く理解し、それを視覚的な形式(スライド)に再構成する能力を持っていたことを示しています。公式アップデートは、この水面下で進んでいた能力を、正式な機能としてユーザーに開放したものと言えるでしょう。
土地家屋調査士・ビジネスパーソンへの活用提案
この「PDF生成」と「LaTeX対応」は、私たちの業務をどう変えるでしょうか。
活用例1:土地家屋調査士の報告書ドラフト作成
土地家屋調査士の業務では、「現況測量報告書」や「境界確認の経緯報告書」など、多くのドキュメントを作成します。Gemini Canvasに必要な情報(測量データ、写真、考察)を箇条書きでインプットし、「報告書のドラフトとしてPDF化して」と指示するだけで、体裁の整った一次案が完成する可能性があります。
特にLaTeX対応により、今後は複雑な計算式や座標一覧表なども、より正確にドキュメントに組み込めるようになるでしょう。
活用例2:中小企業の企画書・提案資料の迅速化
中小企業の経営者や担当者にとっても、この機能は強力な武器になります。
例えば、Google Workspace(ドキュメントやスプレッドシート)にあるデータをGeminiに連携させ(※将来的な機能拡張を含む期待)、「このデータに基づいた提案スライドをPDFで5枚作成して」と指示するだけで、クライアント向けの提案資料のたたき台が一瞬で完成するかもしれません。
活用例3:技術部門(エンジニア)のレポート作成
LaTeX対応は、エンジニアや研究開発部門にとって朗報です。技術レポート、仕様書、社内研究の発表資料など、これまで専門ソフトで作成していた数式や図表入りのドキュメント作成が、Gemini上で完結できる可能性が出てきました。
まとめ:Geminiは「実務的ドキュメント生成AI」へ
今回のアップデートと筆者の先行体験が示すのは、Geminiが単なる「対話AI」から、具体的な成果物(PDFドキュメント)を生成する「実務的なAIアシスタント」へと確実に進化しているという事実です。
特に、専門知識が必要だったLaTeXのハードルを下げたことは、士業や技術者にとって大きな意味を持ちます。これまで「資料作成」にかけていた時間を大幅に削減し、より本質的な業務(分析、判断、コンサルティング)に集中できる未来が近づいています。
結論
Geminiの進化は止まりません。私たち専門家やビジネスパーソンは、この強力なツールを「どう使いこなすか」を常に考える必要があります。
まずは、あなたもGeminiに「(この内容を)PDFにしてみて」と、気軽に頼んでみてください。きっと、あなたの業務を効率化する新しい発見があるはずです。
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geminic.netでは、土地家屋調査士業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)から、Google Workspaceや生成AIを活用した中小企業の業務効率化コンサルティングまで、幅広くサポートしています。
「AIをどう使えばいいか分からない」「資料作成を自動化したい」といったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。