Googleの新AI「Pomelli」とは? 土地家屋調査士会のサイト分析とブランディング戦略への活用法


Googleがまた一つ、興味深いAIツールをGoogle Labsから発表しました。その名は「Pomelli」。このツールは、自社のウェブサイトが「意図した通りの印象」を訪問者に与え、「ターゲットとする層」に響いているかをAIが分析・評価してくれるというものです。

私たち土地家屋調査士や他の士業にとって、ウェブサイトは「信頼」を獲得するための重要な窓口です。しかし、専門的な情報を発信するあまり、「本当に伝わっているか」「顧客目線で分かりやすいか」を客観的に測ることは容易ではありません。

本記事では、この新しいAI「Pomelli」の概要と、私たち士業、特に土地家屋調査士会のような組織のサイト分析や、個々の事務所のブランディング戦略にどのように活用できるか、その可能性を探ります。

Googleの最新AI「Pomelli」とは?

「Pomelli」は、Google Labsが開発中の実験的なAIツールです。その最大の目的は、ウェブサイトが訪問者に与える「第一印象」や「ブランドイメージ」を、AIが客観的に評価することにあります。

従来のアクセス解析ツール(Google Analyticsなど)が「どれだけの人が来たか」「どのページを見たか」といった量的なデータを分析するのに対し、Pomelliは「サイトがどう感じられたか」「ブランド価値と一致しているか」といった質的な側面を分析するのが特徴です。

Pomelliの主な機能:サイトの「印象」をAIが分析

現時点で公開されている情報(Pomelli公式サイトより)によれば、Pomelliは主に以下の3つの側面からサイトを評価します。

  • 第一印象の分析 (First Impression)
    訪問者がサイトを初めて見たときに感じる「直感的な印象」を評価します。例えば、「プロフェッショナル」「信頼できる」「親しみやすい」「分かりにくい」といった感覚的な部分をAIが言語化・スコア化します。
  • オーディエンスとの適合性評価 (Audience Persona Alignment)
    サイトがターゲットとする特定のペルソナ(顧客像)を設定すると、そのペルソナの視点でサイトがどう見えるかをシミュレーションします。例えば、「土地の相続で困っている個人」と「大規模開発を行う不動産業者」では、求める情報や安心感のポイントが異なります。Pomelliは、そのズレを可視化する手助けをします。
  • ブランド・価値観との一致度 (Brand and Value Alignment)
    事務所が掲げる理念やブランドイメージ(例:「迅速・正確」「地域密着」「最新技術に強い」)と、サイト全体のトーン&マナー、コンテンツの内容が一致しているかを評価します。

なぜ今、土地家屋調査士にPomelliが注目されるのか?

私たち土地家屋調査士の業務は、非常に専門的です。それゆえに、ウェブサイトでの情報発信も、つい「専門家目線」になりがちです。

「正確な情報を載せている」という自信はあっても、それが「顧客の不安を解消し、相談を促す」ものになっているかは別問題です。ここに、PomelliのようなAI分析ツールの価値があります。

客観的な「顧客目線」の欠如

例えば、自事務所のサイトを自分で見返しても、どうしても「製作者のバイアス」がかかってしまいます。「この専門用語は常識だろう」「この業務フローは分かりやすいはずだ」という思い込みが、新規の依頼者を遠ざけているかもしれません。

Pomelliは、AIという第三者の目、それも「設定したペルソナの目」でサイトを評価するため、私たちが気づかなかった「分かりにくさ」や「信頼性の欠如」を指摘してくれる可能性があります。

具体的な活用アイデア:士業会サイトと自社サイトの分析

では、もしPomelli(または同様のAIツール)が一般的に使えるようになった場合、土地家屋調査士はどのように活用できるでしょうか。

ケース1:土地家屋調査士会サイトの分析

ご提案いただいたように、まずは「土地家屋調査士会」のウェブサイト分析が非常に有効だと考えられます。士業会のサイトは、多くの場合「会員(士業)向け」と「一般市民(依頼者)向け」という2つの異なるターゲット層を持っています。

  • 一般市民向けページの評価:「土地の境界で困っている」「登記を依頼したい」という人々に対し、「相談しやすい雰囲気」や「分かりやすい説明」が提供できているか。AIに「不安を抱えた一般市民」ペルソナで分析させ、専門用語が多すぎないか、相談窓口への導線が明確かをチェックします。
  • 会員向けページの評価:会員である土地家屋調査士に対し、「有益な研修情報」「迅速な会報の更新」が提供できているか。ブランドイメージとして「会員サポートの充実」「業界の先進性」が伝わっているかを評価します。

このようにAIで分析することで、組織全体のブランディングと情報発信の最適化を図れる可能性があります。

ケース2:自事務所サイトのブランディング強化

もちろん、個々の事務所サイトの改善にも強力な武器となります。

「自分の強みが、第一印象で伝わっているか?」

例えば、「AIやドローン測量を活用したDXに強い」事務所が、サイトの第一印象で「伝統的」「保守的」とAIに評価されたら、それは大きな問題です。Pomelliのようなツールでブランド価値(例:「先進的」「効率的」)を設定し、サイトがその価値観と一致しているかを確認することは、狙った顧客層を獲得するために不可欠です。

ケース3:競合サイトとの比較分析

将来的には、自事務所のサイトと、同じ地域の競合事務所や、他士業(弁護士、司法書士など)のサイトを比較分析することも可能になるでしょう。

「なぜ、あの事務所は依頼が多そうなのか?」その答えが、サイトの「信頼感の伝え方」や「ターゲット層への訴求力」にあるかもしれません。AIによる客観的な比較分析は、自社のポジショニングを明確にするための強力なデータとなります。

まとめ:AIを活用し「伝わる」情報発信へ

Googleの「Pomelli」は、現時点(2025年10月)ではまだGoogle Labsの実験的なプロジェクトであり、すぐに誰もが使えるわけではありません。

しかし、重要なのは、「AIがウェブサイトの“印象”や“ブランド適合性”まで評価する時代が来ている」という事実です。これは、アクセス数や滞在時間といった「数字」だけを追うSEO(検索エンジン最適化)から、より本質的な「顧客体験」や「ブランド伝達力」を重視する方向へ、ウェブ戦略がシフトしていることを示しています。

私たち土地家屋調査士も、自らの専門性や価値を「正しく、分かりやすく」伝える努力が不可欠です。AIという新しい鏡を使って自らの発信を客観的に見直し、改善し続ける姿勢が、これからの時代に選ばれる専門家であり続けるための鍵となるでしょう。

結論:まずは自サイトの「目的」を再確認しよう

PomelliのようなAIツールが登場する前に、私たちにできることがあります。それは、「自社のウェブサイトで、誰に、何を感じてほしいのか」を明確に定義し直すことです。

  • ターゲットは誰ですか?(例:個人の相続案件、不動産業者、公共事業)
  • サイト訪問後にどう行動してほしいですか?(例:電話相談、資料請求、業務内容の理解)
  • 事務所の最大の「強み」や「価値観」は何ですか?(例:迅速性、正確性、AI活用)

これらの定義が明確であってこそ、AIによる分析も真価を発揮します。

geminic.netでは、Google Workspaceの活用支援だけでなく、こうしたAI時代における士業の情報発信戦略や業務効率化のコンサルティングも行っております。ご自身のサイト分析やAI活用の第一歩についてご興味がございましたら、お気軽にご相談ください。