3Dレーザースキャナー & ドローン点群 統合


近年、地上型3Dレーザースキャナーとドローン(UAV)写真測量を組み合わせた「ハイブリッド測量」の需要が高まっています。しかし、異なるデバイスで取得した点群データを統合し、最終的にJGD2011(日本測地系2011)に基づいた正確な測量図に落とし込むプロセスは、多くの「見えない落とし穴」が存在します。

「E57ファイルを取り込んだら座標が入っていなかった」
「ReCapで位置合わせができない」
「Civil 3Dに持っていくとXとYが逆になる」

今回は、私自身の実務における試行錯誤と検証の記録をもとに、Autodesk ReCap Pro、Civil 3D、そしてAgisoft Metashapeを連携させた、点群編集・図面化の「鉄板ワークフロー」を公開します。

全体像:3つのフェーズで攻略する

作業は大きく分けて以下の3つのフェーズで進行します。

  • フェーズ1(ReCap):データの軽量化とクリーニング(※ここでは無理に座標を合わせないのがコツです)
  • フェーズ2(Civil 3D):JGD2011座標系の定義と、点群の精密な位置合わせ(ALIGN)
  • フェーズ3(統合):ドローン点群(Metashape)との合体

フェーズ1:ReCap Proでの「下ごしらえ」

まず、3Dスキャナーから出力されたE57データをReCap Proに取り込みます。ここでの目的は「図面化の邪魔になるノイズを消すこと」です。

1. インポートとインデックス化

スキャンデータを読み込み、「インデックス化」を実行します。
もし、お使いのE57ファイルが「非構造化(Unstructured)」データである場合、ReCap上での自動レジストレーション(結合)や座標付与ができないことがあります。その場合は、ReCapでは座標を触らず、クリーニングに専念してください。

2. 徹底的なクリーニング

MetashapeユーザーがReCapを使う際、最初は操作感の違いに戸惑うかもしれません。以下の機能を活用して、車、人、植生などの不要な点を削除します。

  • Limit Box(リミットボックス):CTスキャンのように空間を「薄切り」にして、建物の内部や断面だけを表示させます。これにより、壁や天井に邪魔されずに床面付近のノイズを除去できます。
  • Clip Outside(範囲外を削除):必要な範囲を選択し、それ以外を一括削除します。

クリーニングが終わったら、必ず「名前を付けて保存(.rcp)」を行ってください。これにより、削除したデータの容量が完全に解放され、ファイルが軽量化されます。


フェーズ2:Civil 3Dでの座標設定と位置合わせ

ここが最重要パートです。座標のない点群を、Civil 3D上で正確なJGD2011座標に配置します。

1. 測量座標系(JGD2011)の設定

Civil 3Dを開き、以下の手順で図面の座標系を定義します。

  1. [ツールスペース] > [設定] タブ > 図面名を右クリック > [図面設定を編集]
  2. [単位とゾーン] タブで、カテゴリ「Japan」、座標系「JGD2011-CS-XX(現場の系)」を選択。

2. 「正解位置」の作図とX/Yの罠

GCP(標定点)の座標位置に、目印となる「円(CIRCLE)」を作図します。ここで最大の注意点があります。

【重要】数学座標と測量座標の違い
Civil 3D(数学座標):X=東、Y=北
測量座標:X=北、Y=東

CADに入力する際は、「Y座標(東距), X座標(北距)」の順で入力する必要があります。

例えば、測量成果が X(北)=35000, Y(東)=135000 の場合、CADには 135000,35000 と入力して円を作成します。これを最低3点分行います。

3. ALIGNコマンドによる位置合わせ(プロの技)

ReCapデータをアタッチ(挿入)した後、ALIGN(位置合わせ)コマンドを使いますが、ここにもコツがあります。

「XY(平面)」と「Z(高さ)」を一度に合わせようとしないでください。わずかな誤差で建物全体が斜めに傾くリスクがあります。

手順A:水平位置(XY)と回転を合わせる

  1. 点群上のGCP位置に、目視で「仮の円」を描いておきます(スナップしやすくするため)。
  2. ALIGNコマンドを実行し、点群全体を選択。
  3. 1点目:「点群上の仮の円」→「正解の円」
  4. 2点目:「点群上の仮の円」→「正解の円」
  5. 3点目は指定せずにEnter。
  6. 「尺度を変更しますか?」には必ず「いいえ」を選択します。

手順B:高さ(Z)を合わせる

  1. 側面ビュー(右・前など)に切り替えます。
  2. MOVEコマンドを使い、点群全体を垂直方向に移動させ、高さを合わせます。

フェーズ3:ドローン点群との統合

最後に、Metashapeで作成したドローン点群を統合します。

  1. Metashape側:点群を「.las形式」かつ「JGD2011座標系」でエクスポートします。
  2. ReCap側:新規プロジェクトでその.lasを読み込み、インデックス化して「.rcp」形式に変換・保存します。(Civil 3Dは.lasを直接読み込めないため)
  3. Civil 3D側:[挿入] > [点群をアタッチ] でドローン用.rcpを読み込みます。

座標系が正しく設定されていれば、スキャナーの点群とドローンの点群がピタリと重なるはずです。表示順序を調整し、精度の高いスキャナー点群を手前に表示させれば完成です。


まとめ:ツールごとの役割を理解する

今回のワークフローの肝は、各ソフトの「得意分野」を理解することにあります。

  • ReCap:掃除用。座標は無理に触らない。
  • Civil 3D:座標管理と図面化のメインステージ。
  • Metashape:広域データの生成。

この手順を踏めば、座標のないE57データであっても、正確な測量成果として活用することが可能です。ぜひ日々の業務にお役立てください。